それは、口にした瞬間に、ぶわぁっと広がった。
「あ…甘っっ!」
甘すぎて、正直むせそうになる。いつも食べているチョコレートとかとは全く違う種類の、とろりとした濃い甘さ。
「え?そんなに甘い?これ」
サヤは子瓶の側面に張ってあるラベルをまじまじと眺めた。
瓶の中で揺れる、金色の光。とろとろの
蜂蜜。サヤが買ってきたものだ。
「そんなに甘い?って……。やばいくらい甘いよ」
「本当?じゃあこれあげるよ」
目を蜂蜜の金色に光らせながら、俺の胸に瓶を押し付ける。そして、俺が受け取ったのを確認すると、そっとその手を離した。まるで、一億円のダイヤを手渡すかのように。
「あ、ありがと。でも、なんで蜂蜜?」
「だってさ。タクはいつもチョコ
スティック食べてるんだもん。甘いものなら、蜂蜜のほうがいいの!チョコばっかり食べてると、糖尿病になるもん!」
……表情が本気だ。そんなこと考えてたのかよ。こいつ。
「馬鹿だなぁ、サヤは」
「なっなんでよ!」
頬を風船のように膨らませ、不満げな顔をするサヤ。
それをなだめるように、俺は話し出す。
「俺なーチョコが甘いから好きだってわけじゃないんだよ。ビターチョコ。
甘苦いのが好きなの。甘いだけは、そんなに好きじゃない」
「えーー!!」
ナイス・リアクション。肩がストンと落ちて、サラサラの髪が流れ落ちる。
こういうリアクションは、芸人並だと俺は思う。だから可愛くて面白いんだけど。
「まあ、もったいないからちゃんと蜂蜜、
食べるよ。しばらくはチョコ謹慎だな」
「本当に!?タク、優しい!」
パッと顔を輝かせ、俺の手をぎゅっと握る。もちろん、蜂蜜も。
「この蜂蜜食べれば、きっと『甘い』だけも好きになるよ。苦味なしで!」
そうだといいけど。
end.