「……ちょっと」
「ん?」
あいつは気だるそうに振り返る。
「足、速いんですけど」
ついさっきまで隣で歩いていたのに。あっというまに1メートルの差。
こいつは凄い足が長い。だから、歩幅がありえないほどに大きいのだ。
それに対し私は中肉中背。彼の歩幅に合わせようと大またに歩いても、追いつききれないのだ。
「ああ、ごめんごめん。なんか、つい」
苦笑いしながら私が追いつくまで止まっている。なんか、腹立つな。前からこれ、何回も繰り返すんだもん。
「あのさー」
「何?」
「少しは勉強してくれないかな」
「何を?」
「もう少しゆっくり歩くってこと!」
私が少し怒って彼を睨むと、彼は眉をちょっと傾けて笑った。
「だって、恥ずかしいだろ」
「は?何が?」
「俺達なんか、彼氏と彼女みたいにみえるじゃんか」
「え」
硬直。え、そんな風に見える?だったらちょっと嬉しい……って何考えてるんだ私。頭に浮かんだ空想を振り切ってみせる。
「でも、まあいいよ。お前が並んで歩きたいっていうなら。俺はこれからちゃんとあわせるよ」
なんだか憂いをおびた笑顔が胸をきゅっと締め付ける。
「うん…ありがと」
……これからは、私も背をのばす努力をしようかしら。
end.










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