夕焼けが、頬にあたって朱にそまっていた。
静かな教室で、机に突っ伏して居眠りしてた君。
白い肌、薄い唇、端正な顔立ち。全てが、私にとっての憧れだった。
「あのさー彼女とか、いないの?」
時々チラッと聞いてみた。でも、すぐに「いるわけないだろ?俺、いままで彼女いたことないから」と笑って流された。
「……起きてる?」
そっと、語りかけてみる。返事はない。居眠りのつもりで、熟睡してしまっているようだ。
――いまなら、ちょっとチャンスかも?脳裏によぎるいけない思考。ダメダメ。そんな事考えちゃ。でも、でも。足は、じわじわと彼の机に向かって行く。
近くまで来ると、彼の寝息がスースーと聞こえてクスリと笑ってしまった。可愛い奴。
今なら、肩を叩いて「起きて」といえば、あっさり起きるかもしれない。でも、顔に落書きしても、起きないかもしれない。
……ばれない、よね。生唾を飲んで、彼の寝顔を見つめた。
まだ、彼は誰ともキスしてないんだよ、ね?心臓が鐘のようにガンガンと鳴り出した。そっと、そっと彼の顔に近づいていく。
そして、軽く、キスをした。
顔が熱くなって、心臓が今にも飛び出しそう。やっちゃったやっちゃった。
でも、彼は気づいてない。よかった。
パッと唇を離し、走り去ろうとしたけどやめた。足音で起こしたら嫌だから。
でも、できるだけ足早に立ち去ろうとした。
「…奪われちゃったな」
ドキ。…それは、教室を出るまであと5歩の時だった。
「俺のファーストキス。やってくれたな」
振り返れない。体の芯が地面に突き刺さったよう。
「こっち見ろよ。責任、とってもらおっかな?」
彼との距離、あと、5m。
end.
Title by…架空少年

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