2008年04月20日

はちみつビター

それは、口にした瞬間に、ぶわぁっと広がった。

「あ…甘っっ!」

甘すぎて、正直むせそうになる。いつも食べているチョコレートとかとは全く違う種類の、とろりとした濃い甘さ。

「え?そんなに甘い?これ」

サヤは子瓶の側面に張ってあるラベルをまじまじと眺めた。
瓶の中で揺れる、金色の光。とろとろの蜂蜜。サヤが買ってきたものだ。

「そんなに甘い?って……。やばいくらい甘いよ」

「本当?じゃあこれあげるよ」

目を蜂蜜の金色に光らせながら、俺の胸に瓶を押し付ける。そして、俺が受け取ったのを確認すると、そっとその手を離した。まるで、一億円のダイヤを手渡すかのように。

「あ、ありがと。でも、なんで蜂蜜?」

「だってさ。タクはいつもチョコスティック食べてるんだもん。甘いものなら、蜂蜜のほうがいいの!チョコばっかり食べてると、糖尿病になるもん!」

……表情が本気だ。そんなこと考えてたのかよ。こいつ。

「馬鹿だなぁ、サヤは」

「なっなんでよ!」

頬を風船のように膨らませ、不満げな顔をするサヤ。
それをなだめるように、俺は話し出す。

「俺なーチョコが甘いから好きだってわけじゃないんだよ。ビターチョコ。
甘苦いのが好きなの。甘いだけは、そんなに好きじゃない」

「えーー!!」

ナイス・リアクション。肩がストンと落ちて、サラサラの髪が流れ落ちる。
こういうリアクションは、芸人並だと俺は思う。だから可愛くて面白いんだけど。

「まあ、もったいないからちゃんと蜂蜜、食べるよ。しばらくはチョコ謹慎だな」

「本当に!?タク、優しい!」

パッと顔を輝かせ、俺の手をぎゅっと握る。もちろん、蜂蜜も。


「この蜂蜜食べれば、きっと『甘い』だけも好きになるよ。苦味なしで!」


そうだといいけど。



end.


Title by…架空少年




ニックネーム 由姫 at 20:19| Comment(0) | 恋で30のお題【詩】
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