2008年03月26日

リクエストどうぞ。

人が慌しく歩いている街の中、俺達は歩いている。

「ね、どこ行くの?」

俺の顔を覗き込んでくる。大きな目に俺の姿が映っていた。

「そーだな〜。そこの店入ろう」

返事を聞かずに歩き出す。こいつは、俺の行きたいところにいつでもついてきてくれるから。
扉を開けると、チリリンとベルが優しくなった。うん、なかなか洒落た喫茶店だ。

「コーヒー2つ。あと、日替わりケーキも」

注文をすると、品はすぐにやって来た。

「じゃ、食べよーぜ?」

「……」

「どうした?」

「え、あ、いや…。大丈夫だよ」

その時は慌てて笑顔を取り繕っていたけど、やっぱり様子がおかしかった。
俺の話に相槌をついてはいるが、頭に入っていそうにない。窓の外を頬杖ついて見つめ、なんとも儚い表情だった。
俺はたちまち不安になった。俺のこと、嫌いになったんだろうか。でも、本当に不安そうだったのは、彼女のほうだったのかもしれない。


…ふと、思った。俺は、自己中なのかもしれない。

こいつの意見、あんまり聞いた事がない。いつも俺が喋ってて、こいつがそれに従ってるって感じ。

「…なあ」

「え?」

「お前、何かしたいことあるか?」

「えっ、と……」

彼女は、しばらく黙っていた。

「…いいの?」

「もちろん。俺はお前のしたいことをするぞ?」

「……うん!」


その後にあいつは泣きそうな笑顔になって、「ありがとう」を言った。



end.



Title by…架空少年


ニックネーム 由姫 at 19:15| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】
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