坂野も俺も、それから毎日道場に通うようになった。一緒に稽古することは一度もなかったが、その後の片付けを2人でやるのがいつもだった。
「名城君はさ、大会でいい成績を取った事あるの?」
いつものとうり坂野とモップがけをしている時に、突然聞かれた。なんとなく言うのが照れくさくて、つい癖で鼻の頭をかいてしまう。
「まあ、個人で関東ベスト8たったのが一番よかったかな。坂野は?」
そう言って横の坂野を見ると、目を丸くした坂野が俺を真っ直ぐに見ていた。どき。どうしたんだろう急に。
「な、何?」
「…癖……鼻の頭…」
坂野は半ば呆然としていて、口も半端に開いたまま俺を見つめて呟いた。
「ああ。俺、こう言うときに鼻の頭をかく癖があるんだよね…って、これがどうかしたのか?」
「……嘘……嘘でしょ…?」
「坂野?おい、大丈夫かよ?なんかしたか俺?」
おいおいおい。目が完璧に混乱してるよ。どうすればいいんだ俺。
「なあ、さか――」
「ごめん、私先に帰るね!あと片付けの残りよろしく!」
「えっ、ちょっ……」
俺の言葉も聞かずに、坂野はTシャツ短パンで道場を飛び出した。逆に呆然とする俺。
一体全体どうなってんだ?
続く.

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