2008年03月31日

咲き誇る白い花の名は、


その歌声は、どこまでも澄んでいた。高く、もっと高く――

『ワタシノナミダヲトメテクダサイ……キミニデキマスカ』

そんな歌詞が心に染みた。彼女はそれを歌っているだけだろうけど、俺は彼女が涙を流したならばに本当に助けに行こうと思ったぐらいだ。



それは、隣町であった有名音楽コンクールでの事だった。
友達のハルキがそのコンクールに出場することになったので、その応援に無理やり連れて行かれたんだ。

元々音楽とかには興味がなかった。まあ、嫌いではなかったけど。でも、友達の晴れの舞台だったから、しかたなく行ったわけ。

そして、彼女を見た。

息をスッと吸った音がマイクに入って、静かなホールに響いて。


……その後は、頭が真っ白になりそうだった。



プログラムの半分を終了させた後のロビーはざわざわとしていた。
俺は、いつのまにかハルキのことを忘れ、彼女の姿を捜していた。


――高く青く光るあの空より――

耳の中に聞こえるか細い歌声。確信があった。

――白い露に濡れて咲く花――


ざわめきの中ではっきりと見据えた白いドレス。

「……その歌、エーデルワイスって言うんだっけ」

俺が言うと、彼女はちょっとおどろいた顔をして俺を見た。
でも、すぐに優しく微笑んだ。

「知ってる?私、この歌好きなんだ」


その時の君は、まさに山の高きに咲くエーデルワイスだったよ。
と、言うのは、あと4ヵ月後の話。



end.


Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 23:02| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年03月28日

夢の無い子供たち

「なあなあ、今日の山羊座、bP星座だったんだぜ!」

「…ふーん」

「で、ラッキーカラーは青!お前にピッタリじゃん」

「…ん。そう」

「……」

反応が薄い。いつもの事。
こいつ、占いだとかジンクスだとか、普通女の子が好きなことが嫌いらしい。
現実的なんだよな。夢がないっていうか。

「そうだ、この前のテレビ見たか?『奇跡の超能力捜査!』」

「あんなの嘘っぱちよ」

こいつはそう言いながら、「実用英会話法」とかなんとか書かれた字がとてつもなく小さい本を気だるそうに読んでいる。

「う〜ん、お前の好きなことって、何よ?」

「そうだね……」

彼女はまた気だるそうに俺を見た。

「こうしている事かな」

「え?」

驚きで一瞬呼吸が止まった。


「私が本を読んでいて、隣で君が話してる。私はそれがいい。いつも気にかけてくれて、ありがとう。冷たくしててゴメンね」


その時の微笑みは、たぶん一生忘れないだろうと思う。



end.


Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 21:35| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年03月27日

いつか、あの手を掴める日が来ますように。

その手は、暖かかった。
たぶん、偶然だったんだろう。すれ違った、あの瞬間。

手と手が、確かに触れた。

暖かく、たくましい手が、私の手に触れていた。
驚く心臓を抑えて振り向いた時には、彼の姿は消えていたけど。



前から、彼の事は気になっていて、目で追っていた。
でも、こんなに気持ちが高まったのは、初めて。頬が熱かった。

いつも部活頑張っていた君だから。汗を流していた君だから。
あんなに優しい手をしていたんだと思う。


ほら、今だって優しそうに笑ってる。

だからそっと目を閉じて、思う。
今度あの手に触れたときは、そっと、その手を握ろう。



いつか、あの手を掴める日が来ますように。




end.


Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 21:24| Comment(1) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年03月26日

リクエストどうぞ。

人が慌しく歩いている街の中、俺達は歩いている。

「ね、どこ行くの?」

俺の顔を覗き込んでくる。大きな目に俺の姿が映っていた。

「そーだな〜。そこの店入ろう」

返事を聞かずに歩き出す。こいつは、俺の行きたいところにいつでもついてきてくれるから。
扉を開けると、チリリンとベルが優しくなった。うん、なかなか洒落た喫茶店だ。

「コーヒー2つ。あと、日替わりケーキも」

注文をすると、品はすぐにやって来た。

「じゃ、食べよーぜ?」

「……」

「どうした?」

「え、あ、いや…。大丈夫だよ」

その時は慌てて笑顔を取り繕っていたけど、やっぱり様子がおかしかった。
俺の話に相槌をついてはいるが、頭に入っていそうにない。窓の外を頬杖ついて見つめ、なんとも儚い表情だった。
俺はたちまち不安になった。俺のこと、嫌いになったんだろうか。でも、本当に不安そうだったのは、彼女のほうだったのかもしれない。


…ふと、思った。俺は、自己中なのかもしれない。

こいつの意見、あんまり聞いた事がない。いつも俺が喋ってて、こいつがそれに従ってるって感じ。

「…なあ」

「え?」

「お前、何かしたいことあるか?」

「えっ、と……」

彼女は、しばらく黙っていた。

「…いいの?」

「もちろん。俺はお前のしたいことをするぞ?」

「……うん!」


その後にあいつは泣きそうな笑顔になって、「ありがとう」を言った。



end.



Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 19:15| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年03月25日

進化させたい、させたくない?

なんか今、頭の中で赤信号がチカチカ光ってます。

「さーて……どうしちゃおっかな〜」

目の前にはあいつのドアップ。う、うわ〜どうしよう。

話を戻せば5分前。私は彼に告白された。
いや、普通ならときめく場面なんだけどね。こいつとは小学校からずっと一緒の悪友って感じだったから。
私っていまいちそういう場面に弱い。だから、つい。「好きだ」っていったこいつのこと、「バカーー!冗談言うな!!!」って顔面パンチ。
あ、やばい!と思った時は既に遅し。
こうやって、壁に追い詰められてしまったわけだ。

「真剣に告白した男を殴るとはいい度胸だな〜お前」

「…ごめん」

2人きりの教室に、私の声が響いている。

「ま、お前はそんな性格だもんな」

私にかぶさる影が、心なしか大きくなっていた。


「…お前俺のこと好きか?」

「え!?」

「嫌いか?俺のこと。正直に言ってくれよ?」

あいつの綺麗な眉がひそめられる。なんかその時のあいつの顔…変な言い方すると色気があった。こんな表情見たことがなかった。バクバクする心臓。

「えと、んと、あの……友達以上恋人未満って感じかな」

なんとか搾り出した答え。でも、あいつはそれだけじゃ納得しなかった。

「はっきりしないな」

「ぁ……」

あいつの顔がどんどん近づいてくる。

「俺を恋人まで進化させたい?それともこのまま?」

囁く息が、唇に当たっていた。

…二人の距離、あと3センチ。



end.


Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 20:50| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年03月24日

可愛いワガママでも聞いてあげるとしますか

「じゃー俺もう行くから」

鞄を肩にかけ、扉に手をかける。

「あっ、いやっ待って!」

ぎゅっと袖をつかまれた。ふう、とため息をついて振り向くと、やっぱり。ほっぺを膨らませて、寂しそうな顔。

「……なんだよも〜」

「だって、まだ宿題終わってないもん。教えてくれるって約束したじゃん!」

「俺だって自分の宿題があるんです!」

「いーじゃんもう高校生なんだから!私は受験生だよ?」

「……はいはいわかりました」

「♪」

強気に言われると、どうも弱い俺。年下だからって、甘えさせすぎだと思うよなー。全くワガママな彼女を持ってしまったな。

付き合い始めて早一年。俺は高校生になり、こいつは受験生。
こいつ、俺が県でトップレベルの高校に受かったと聞いたとたんに「あたしもその高校行く!」なんて言い出して、猛勉強を始めたんだ。ワガママ言っても、これだけば自分の力じゃないとダメだものな。
でも、俺が部活ない日はこいつの家庭教師をするって約束うっかりしちゃったから大変なんだよ〜。正直俺の成績が落ちそうで怖い。

「ねえねえ」

「んだよ」

「もし同じ高校に合格できたらさ」

「うん」

「絶対一緒に学校行こうねっ」

「……」

全く。どうも俺はこの笑顔に弱い。
しょうがない、今年は頑張ってこいつの勉強に付き合ってやるか。



end.



Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 21:08| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年03月23日

さよならで始まる恋。

涙で濡れ、紅潮した頬。涙声なのに、無理してはにかんでいて。

「いままでありがとう」

そう言った時、また雫がこぼれていたっけ。

「さよならっ…ま……た…っ」

最後の方は声が震えていて聞き取れなかった。お、おい、どうしたんだよ。言いながら手を差し伸べたが、その手に応えることはなかった。

涙をポロポロこぼしながら、お前は笑ったな。そして、静かに首を振って、友達の所に走り去っていったっけ。桜の木の下で、俺は呆然としてた。

後から聞いたら、お前、俺のこと好きだったんだな。前からずっと、片思いで。気づかなくて、ごめんな。
でも、もっと謝ることがある。


あのお前を見て、惚れちゃったよ。

きっと聞いたら怒るだろ?だけど、いつかまた会えたら、このことをお前に伝えたいんだ。お前もあの時、「また会おう」って言おうとしてただろ?

それに、とってあるんだ。第2ボタン。

いつか会えたら、お前に笑って渡すから。

その時、お前はどんな顔をするだろうか?




end.


Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 21:58| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年03月22日

謝るくらいなら傷つけるな

「ごめん!」

俺は腰を90度下げて、ユウに謝った。

「なーにが?」

ユウの奴、腕をがっしり組んで、俺を見下した視線を向けている。ふん、俺より頭一個小さいくせに。

「…待ち合わせに1時間遅れたことです」

「あら、どうしてかなー?」

「……ぼう」

「ん?ごめん聞こえないなー」

「寝坊しました!!」

「そーですかそーですか」

わざとらしく首をうんうんと頷いてみせる。やば、かなり怒ってるかも。

「…まあ許そう。ワタクシは心が広いので!」

まだ頬を膨らませながらも、ユウは俺に手を差し出した。俺は頭を上げ、その手を握る。

冷たい。ユウの手は、もうすぐ春だというのに冷えていた。
…俺のこと、ずっと外で待っててくれたからだよな。寒いのに、手が冷たくなるほど立ちつづけて。

「本当にゴメンな」

俺はまたそう言って、ユウの手を強く握った。もう、ユウを待たせるようなことはやめようと誓いながら。


end.



Title by…架空少年
ニックネーム 由姫 at 22:01| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2.憧れ

いつからだろうか

君を目で追うようになったのは


頬から流れる汗が

キラキラと光っていて


真剣なその目は

強く輝いていた


君のようになりたかった


私もそれくらい真剣に

輝いてみたかった


でも今はいいの

そんな君を見てるだけで充分だから



Title by…Avantage
ニックネーム 由姫 at 21:38| Comment(0) | 恋で30のお題【詩】

2008年03月21日

1.出会い

出会いと別れはいつでも一緒って言うけど


じゃあ今目の前にいるあの人とも

いつかは別れるときが来るんだろうか


来なければいいのに

口を小さく動かした


ずっと一緒にいられればいいのに

だってこんなに楽しいんだもの


だからこの気持ちが通じなくても

お願いだから離れないで






Title by…Avantage
ニックネーム 由姫 at 23:23| Comment(0) | 恋で30のお題【詩】