【フシギナヒトビト】更新期間が 月の2,4週目になりました(^u^)

2009年03月13日

10 21人



「えぇ!?」

私は疲れも忘れて大声を出してしまい、尚文くんが「しー」と指を立てる。

神隠しにあった本人が今目の前にいるなんて…なんだか凄いかも。そうおもって見れば、尚文くんから不思議な空気を感じた。

「でも…何も思わないのか?」

「え?」

私が意味もわからず尚文くんを見つめると、尚文くんはまた少し残念そうな顔をした。

「そっか。じゃあ説明するけどさ。変なリアクションするなよ?」

怪訝な顔をしている尚文くん。つい唾をゴクリと飲み込んでしまう。


「横山。実は横山も俺と同じバスに乗ってたんだよ」

「えぇ!??」

「だからそんなリアクションするなって……」

なにそれ。そんなこと全然覚えてない。知らない!
私があのバスの中に?てことは、私も神隠しにあった21人の1人ということで?

「ねえ尚文くん。行方不明になっている間、21人はどうなっていたわけ?」

迷子にでもなってたわけ?と、しばらく間をあけてからたずねる。まだ、完全に信じたわけじゃないけど。だって、なんで尚文くんが私の存在を覚えているかわからないもの。

「迷子じゃないよ。それに、神隠しでもない」

「どういうこと?」



「誘拐だよ。それも大規模な」

「……誘拐?」
ニックネーム 由姫 at 14:12| Comment(0) | フシギナヒトビト。【不定期連載】

2009年01月22日

9 記憶


と、突然尚文くんが私の手を取った。一気に私の心拍数が上がる。

「え、ちょっと尚文くん……!?」

「ごめん。この方が読み取りやすいと思うから」

「え?」

やだ、手が汗ばんでたらどうしよう。男の子に手を握られるなんて…。それにわけわかんないよ…。


「いいか?今から俺が頭の中にある映像を思い浮かべる。横山はそれを読み取るんだ」

じっと私の目を見つめる。で、でもどうやって?私まだ力をうまくコントロールできないのに。念じればできるのかな?よくわからないまま「わ、わかった」と頷いて目をつぶって集中した。


尚文くんの頭の中…頭の中を見る…頭の中……。


すると、突然自分が何かに吸いこまれる感覚がした。




目を開ければ、私はバスの中にいた。


成功、したの……かな?視界は狭く、大半がぼやけてしまっている。しかも断片的な映像らしい。

バスの座席には園児が座っていた。幼稚園バスの中にいるんだ。

ここで映像がかすれ、バーンという大きな音と園児の悲鳴が聞こえた。

場面が次々と見えてくる。


フロントガラスに広がった鮮血と倒れる運転手の姿。次々と割れるガラス。バスに侵入してくる人影。そして口をふさぐ大きな手。

≪もういいだろ?≫

尚文くんの声が意識の中に響き、私はそれを合図に現実へ抜け出した。
体がぐっと重く感じる。今までと違って、とても疲れた。息も切れている。

「はぁっ……!な、尚文くん…今の……?」

「ごめん、無茶ぶりして。まだコントロールできてなかったのに」

尚文くんが悲しそうな顔をする。

「でも、説明するためにどうしても横山に見せたかった」

「えっ?どうして……ゲホッ」

「大丈夫?」

咳き込む私の背中にそっと手を当ててくれる。不思議と暖かい。これも、尚文くんの力なのかもしれないと思った。

「今俺が見せたのは…俺の記憶だ」

「え?それって」



「神隠しにあったといわれる21人の1人は、俺だよ」
ニックネーム 由姫 at 22:00| Comment(1) | フシギナヒトビト。【不定期連載】

2009年01月18日

8 神隠し伝説

「まあ横山は力を上手く使えなかったんだから。しょうがないさ」

尚文くんが私がうなだれるのを見て付け足した。そんなこと言われると余計へこむけどなぁ…。

「じゃあそろそろ本題。横山はこの地域にある伝説知ってる?」
「神隠し伝説のこと?」
「そう」

『神隠し伝説』というのは、私達の住む地域にあるちょっとした伝説のことだ。

この地域では子供がよく親の前から消えてしまう。それは悪魔が子供達を地獄へ誘い、悪魔の使いにするためだ。だから親は子供を大事にして、いつでもその手を握っていなくてはいけない。簡単にいえば、そんな話だった。
もちろん現実には悪魔なんていないから、要するに子供を大事にしろって言いたいんだと思う。

「で、その伝説がどうしたの?」


「実はその神隠しが実際にあった」
「え!?」

尚文くんは新聞の束から1日分選んで床に広げた。今から11年前の夏ごろの朝刊だ。

「『幼稚園バス転倒、21名の園児が突然行方不明』?」

私が見出しをそのまま口にだすと、尚文くんは難しそうな顔をして頷く。

「『昨日午後3時ごろ、○○市内の幼稚園バスが園児を自宅へ送る途中に原因不明の転倒をした。運転手は死亡。しかし、中に乗っていたはずの21名の園児はバスの中にはおらず、その周辺にもいなかった。××幼稚園職員らは「確かに園児のバス乗車を確認した」と証言。事故現場は車の通りが少なく、園児らの姿を目撃したという情報はまだない。警察は誘拐の可能性も視野に入れ、情報提供者をつのりながら捜索を続けている』……これって本当の話?私たちの住む街でこんな事があるなんて、なんだか嘘みたい」

「嘘じゃないんだよなそれが」

尚文くんはまた指先から小さなシャボン玉を何個か出していた。シャボン玉は私と尚文くんの間をゆっくりと漂っている。

「実はな…」

「実は?」

「この事件が俺達のこの力に関係している」

「え?」


どういうこと?神隠し伝説と私達の不思議な力に何か関係が?
ニックネーム 由姫 at 13:51| Comment(0) | フシギナヒトビト。【不定期連載】

2008年12月30日

君の唇は誰のもの


この世には、幼稚な大人は沢山いる。

「智紀ー」

そう、俺の目の前に立つこの女も。

「…何?」
「あのね〜宿題教えてほしいの」

ニッコリと笑う。ああ、いつものパターンだ。ため息をつく余裕もない。

「ああ、いいよ」

しかたなく頷くと、彼女は表情を輝かせる。これもまた、いつものこと。しかもそれが、美少女が見せる特上の笑顔なのだから憎いったらありゃしない。

「ありがとっ!智紀!優しい智紀大好きー!」

ギュッと俺に抱きついてくる。俺は、苦笑いした。全く。こいつはいつまでたっても子供だ。もう16歳なんだが。思春期真っ盛りだぞ?
なのにこいつは平気で男に向かって「大好き」とか言うのだから。困る。本当に困る。俺も最初は騙された。
こいつは深い意味ではなく言っていても、言われた男子は本気に思うのが大抵。だから、今までの被害者は大勢いるのだ。幼なじみだった俺も例外ではない。

「あのな……いいから離れてくれ」

肩をやんわりと押して距離をとる。仮にも男だし、女には優しく接しないといけない。

「なんか最近冷たいね」
「別に」
「あ、ほら。そういうところが冷たいー」

怒った顔をするが、全然怖くない。むしろ可愛く見えてしまう。ぶりっ子みたいなふくれっつらではないけど。



「智紀」
「うん?」
「たまには智紀も大好きって言ってみてよ」
「はぁ?」

つい声を大きくしてしまった。

「ね?お願い、言ってみて!」
「え、そんなこと――」「早く!」

ずいずいと俺に向かってくるものだから、ひるんだ。というか、顔が近いって。そんなマジにならなくてもいいのに…でも言わないとやばそうだ。




「……だ、大好き……」

「私も大好き!わっ智紀可愛いーねっ」

「うるさいっ」


いかん。コイツにコントロールされている。このままではダメだぞ俺。将来は亭主関白になるんだぞ俺。目を覚まさないと……。

「智紀ー大好きー」

「ぅ……」


だめだ。しばらくはこの状態から、逃れることは無理らしい……。




end.
ニックネーム 由姫 at 21:38| Comment(0) | 夕立後に会いましょう【短編集】

2008年12月28日

子どもに

image/rhat-2008-12-28T13:43:53-1.data

自然の素晴らしさを知る

自分を夕焼け空にさらした


私の今までの罪が浮かんだ

一瞬だけ、昔に戻った

素直な子どもになった


ああ、このままでいたい

これ以上墜ちたくない


大人なんて嫌だよ


それでも我慢しなくちゃいけないのに




空よそのままで

私は戻ってくるから

またその美しさを見せて




end.
ニックネーム 由姫 at 13:43| Comment(1) | ちゃんと前に進んでるよ。【詩】

2008年12月21日

7 アルカナ


放課後。私は誰もいない理科準備室にいた。
…尚文くん、こんな場所で何を話すんだろう…?理科準備室なんて、先生だって入らないのに。

「あ、横山。待ったか?」

尚文くんは何冊もの本と古新聞を抱えて入ってきた。そして…ドアの鍵を閉めた。


「あ、あの…尚文くん?」
「ん?」
「なんで鍵を閉めるのかな〜なんて…」
「これはかなり大事な話なんだ。誰にも聞かれちゃいけないし、見られてもいけない」

ピシャリと凄いことを言ってみせる。はは…私ったら変なこと考えてしまった。一瞬だけど、身の安全を確保しようとしてしまった。

尚文くんは抱えたものを床に置きながら座り、私にも座るよう促した。おとなしく言う事を聞く。

「じゃあ一番最初に大事なことを言ってしまうと…俺も『アルカナ』だ」
「アルカナ??」
私が首をかしげると、尚文くんがガッカリした表情を見せる。

「そうか…それもわからないんだっけ。わかりやすく言えば、俺も横山のような不思議な力を使えるってこと」
「え!?」
簡単に言うものだから、余計に驚いた。尚文くんも、私と同じなの?それに、さっき尚文くんが言っていた『アルカナ』って、なんなの?私もその一人なの?

「俺は、いろんなことがコントロールできる。例えば…」
尚文くんはそう言いながら、指先から小さな炎の塊を出した。炎は蛍のように、尚文くんの長い人差し指の周りをふわふわと浮かぶ。呆然と私がそれを見つめていると、今度はそれを大きなシャボン玉に変えてしまった。シャボン玉は指先を離れ、私の鼻先でパンと割れた。

「嘘……」


≪本当だよ≫


「!?……尚文くん、今…」

尚文くんは不敵にニヤリと笑った。

「こういった力を使っていると、誰かが力を使ったってことぐらいは感知できる。まあ、使用者を特定する事はできないけど。いや〜それにしても横山だとは思わなかったけどな〜」

え、尚文くんは私がこの力を使ったことがわかったの?そう考えた時点で、ピンときた。自分の顔の血の気が引くのがわかる。

「尚文くん、あの、もしかして……」

「うん。この間の夜、誰かが俺の頭の中覗いている事、気づいてた。まあ、横山だとは思ってなかったけどなっ」
ニッコリ笑う尚文くん。





……最悪。恥ずかしすぎる……。
ニックネーム 由姫 at 15:11| Comment(0) | フシギナヒトビト。【不定期連載】

2008年12月19日

9.恋敵


まさかとは思っていたけど

あんたまで彼が好きだなんて


信じられないけど

負けてなんかいられない


だってあんたは彼の隣の席

あたしは正反対の位置


積極的にしないと

さすがに負けそう


でもあたしたち腐れ縁

結果はどうであれ


どっちが泣いても文句なし!

友達でいるんだからな!



end.
ニックネーム 由姫 at 21:59| Comment(1) | 恋で30のお題【詩】

2008年12月17日

2 ゴミ箱に紙を捨てるのは勿体無い。食べて

「はぁ〜あ。なーんてくだらないことをしているのか」

伊佐吹弥生は形の良い唇から甘いため息を漏らした。

今俺達はディベートを行っているところだ。これは開帝学院では2週間に1度は必ず行われることである。今回のテーマは「森林伐採について」。

「坂本くん。あなたもそう思わない?」

弥生が俺を見つめてくる。チクショウ。周りの男子の視線が痛い。
弥生は誰が見ても必ず認めるであろう美人である。女子高校生らしいメイクなんてしなくても完璧なのだ。

だから俺が弥生の隣にいると、周りの男子の賛美の視線がとても痛い。無論、弥生の性格を承知してだ。お前らバカかと言いたい。俺と場所を代わっていいならいつでもいい。ただし、弥生がそれを許すなら。


「……俺は意見を主張しあう事は大事だと思うよ」

まあ、それが目的でやっているんだし。

「ああ。そういうわけじゃないの」

弥生は鼻でフンと笑う。

「この私を混ぜてディベートするなんて、私が圧勝するに決まってる。だからくだらないって言っているの。そうでしょ?」

「……」

「あ、そーだ。この話って、要するに紙を無駄遣いするなってことでしょ?じゃあね…ゴミ箱に紙を捨てるのは勿体無いから、坂本くん食べな」

「無理」

俺が即答すると、弥生は頬を膨らませ、不服そうな顔をした。

「仕方ないなー……。あ、議長、発言してもよろしいかしら?」

突然の弥生の挙手に、俺もクラス全体もどよめいた(その中の大半は、男女共に弥生ファンクラブだった。と言うかもはやクラスのほとんどは弥生の手下…いや、ファンである)。

「あ、あ、はい。では、伊佐吹さんどうぞ」

議長が慌てて指名をする。もちろん、伊佐吹と言う部分はやけに丁寧に。
コホンと咳をして、弥生は立ち上がった。

「私、この問題を解決するためのよい方法を思いつきましたの。それは『余った紙を髪にする』という方法です。今週末までにそれをお見せしますから、今日はディベートをここまでにしません?」

紙を髪にする…?俺は自信満々の顔をしている弥生を見上げた。

あ!!思い出して大声を出しそうになった。
弥生は…弥生はあの力を使うのか……。




1週間後。俺達の前に凄いものが現れた。それは…。

「これが、IZABUKIグループ開発の新しいウィッグです」

カツラ。である。

「あ、あのっ!伊佐吹さま、これはどういう意味でしょうか??」

弥生ファンの女子が言う。弥生は(ナイスなタイミングで質問ありがとう)といった顔で微笑む。

「簡単なことです。このウィッグは素材の80%が無駄な紙。先日私が商品開発部に依頼したの。皆さんの賛同が得られれば、実際に市場に出回ると思いますわ」

おおっ!と皆が驚嘆の声をあげた。弥生くん、すばらしい!伊佐吹さま、さすがです〜!黄色い声まで混じっている。

そう。伊佐吹弥生は、IZABUKIグループと言う大企業の会長令嬢である。だから、彼女はいくつもの会社の経営権を握っているも同じ状態なのだ。それでいて、その会社の利益がもの凄いっていうのだから、本当に天才である。


「なあ」

「何?」

皆の間をすり抜け、弥生に話し掛ける。

「何でわざわざこんなことしたんだ?」

弥生はニッコリと笑った。

「ディベートが面倒だったから。それだけよ」


…恐ろしいやつだ。




ちなみに。

弥生が開発を指示したそのウィッグは本当に市場に出て、大ヒットした。


…本当に恐ろしいのだ。

2008年12月15日

1 昨日五回も言ってたのにね。この頭動いてる?


 俺の幼なじみは、最強である。ていうか、もはや魔王である。アイツが歩いた後は周りが塵のように存在を薄くしてしまう。恐怖の存在なのだ。



まあ、実を言うとその人物は女なんだけど。

だから本当は魔王ではなく女王様というべきなんだろう。だが、彼女の前では男でさえその膝を折る。


そう、彼女は最強のドS少女なのだ。



―――


 俺の名前は坂本幸正(サカモトコウセイ)。高校1年生の平凡な少年だ。都内有数のエリート私立、開帝学院で毎日真面目に勉学に励んでいる。
 しかし、それは彼女に妨害されなければの話だ。

「坂本くんっ」

 眩しいほどの美しい笑顔が俺の顔に降り注ぐ。初対面の男なら、コロリとやられてしまうだろう。だが、俺はその美少女の裏の姿が見えている。恐ろしい、恐怖の姿が。

「何?」

「この問題解けたー?」

 彼女は教科書を開き、ページのはじのほうの問題を指す。図形の問題で、隅に小さく「全国正答率3%」と書いてある。

「いや…解いてない」

俺はそう言ってすぐに(しまった)と後悔する。

 
彼女の口の端が不敵に上がる。ああ……見える。彼女の裏のどす黒さが垣間見える……!

「はぁ〜あ……」

綺麗な顔がさも嬉しそうにため息をつく。

「坂本くん…この問題の解き方昨日5回も言ってたよね?この頭動いているのかしら?」

彼女は俺の頭をぺしぺしと手の平で叩く。俺を見下している感バリバリである。





彼女の名前は伊佐吹弥生(イザブキヤヨイ)。最強最悪の才女。



彼女には今までいくつもの伝説を残してきた。これから俺が話すのは、彼女の恐ろしい武勇伝だ――

2008年12月14日

8.嫉妬


わかってる

彼が自分のものじゃないって


でも嫉妬してる

他の女の子と話していると


私って嫌な奴

こんなに性格悪いんだもん


時々思う

彼なんか好きにならなければ良かったって


でもすぐそれを止めちゃう

だってもう好きになってしまったんだもん




end.
ニックネーム 由姫 at 14:58| Comment(0) | 恋で30のお題【詩】